抱きしめることができなかった小さないのちたち
日中、だれもいない
そんな家になってから天井裏でなにかの足音が聞こえるようになった
近所でイタチを見かけたこともある
タヌキもいる
我が家のねこさんに危害はない様子
手入れも追いつかない
広い古い一軒家
まあいっか
そんな感じで数年
その聞こえていた足音がGW頃に変わった
ふむ、、、
家が壊れるのは困る
日に日に
足音が激しくなる
・・・
イタチ？？？
業者を呼ぶしかないかな・・・
脳裏に浮かぶのは「駆除」の文字
ためらう
共存？
ある日声が聞こえ始める
出て行ってもらえないかと
ほうきの柄で天井を突っつく
慌てふためくような足音
出て行ってもらえるかもしれん、、、
何度となく、耳を澄ましつつ天井を突く
しばらくすると
台所の脇からガサガサと聞こえだす
？？？
なにやら、きゃうきゃうと声も聞こえる
壁の隙間に落ちたらしい
おばかーーーーーーーー ( ；∀；)！
夜遅い時間
どうしたものか・・・
しばらくすると静かになった
隙間から出れる場所があったのだろうか・・・
もやっとしながら一晩放置
翌朝
壁に耳を当てる
ガサガサ
・・・
( ；∀；)！
脳裏には業者＝駆除の文字
なにが落ちたのかわからん
でも・・・
台所の壁をぶち破る決断まで
それほど時間を要さなかった
GWも終わった後の日曜日の朝
ハンマー片手に台所の壁に貼られたタイルを必死に叩き続ける
なにやってんだ、、、じぶん
ガサガサと聞こえるあたりを叩き割る
少しづつタイルが剥がれ落ちる
壁の向こうでは相変わらずガサガサしている
壁にようやく穴があく
覗く
一か所目
ハズレ
居るのは柱で隔たられた逆側だった
再びハンマーで壁を叩く
小さく穴のあいたところになにやら毛のかたまりがいた
！
いつでも飛び出していけるように台所の窓を開け放つ
このときはイタチだと思っている
そこへ、姉から食事のお誘い
事情を説明
訪れた姉とふたり
壁を壊し続ける
突然、少し細長いかおが現れる
？！
いたち？？？
きみ、、、
そのかおの大きさなら一人で出れるんじゃないかい？
なんて話かける
えっと・・・
いや・・・なんかおかしい
姉が腕をつっこみ引っ張り出す
いたち・・・じゃない
なにかの赤ちゃん・・・？？？
たぬ・・・き？？？
しっぽを見る
縞模様
・・・
スマホで検索
たぬきとあらいぐまの違いはしっぽの縞模様
しましまがあるのがあらいぐま・・・
わかっている
知っている
無いことにしたいしましま
すると、姉が壁からもう一匹見つけ出す
さらにもう一匹
ぜんぶで三匹
あらいぐまを飼いたくてしかたがなかった子どもの頃
けれど、飼うのは非常に手のかかるいきものと知った
日本で野生化し住宅を作物を荒らす
害獣と呼ばれる存在となってしまったことが
かなしかった
それが
我が家の壁の隙間に
見つけたら役所に届けなければいけない
逃がして罰せられることもあるらしい
罰せられても逃がしたい
これがホンネ
逃がすには小さすぎるいのち
飼うには届出が必要
届ける？
そもそも許可されるものなのかわからない
いや、、お世話は出来ない
役所へ連絡
日曜日
明日環境課へ連絡するように言われる
我が家のねこさんのキャリーに入れ
一晩
きっと親といっしょにいたであろう天井裏へと
親が戻ってきている様子はない
時折、声が聴こえてくる
おなかが空いているであろう親を呼ぶ声
その声を聴かないようにしながら
ごはんとおやつを我が家のねこさんに与えるじぶん
翌朝
にんげんのルールに則り役所へ連絡し引き取りを依頼
引き取りに来た職員にゲージに入れ替えますねと言われ
このキャリーのまま連れて行ってくださいとお願いをした
今度はね
わたしがお世話させてもらえる毛皮着て
戻っておいで
